産業技術遺産探訪 2003.12.23.
切立橋
(きったてばし)
福島県河沼郡河東町、耶麻郡塩川町

この橋は1921(大正10)年、「東京電灯株式會社(現在の東京電力株式会社)猪苗代第四発電所」の建設時に資材輸送用軌道を布設(磐越西線・広田駅から猪苗代第四発電所の区間)した際に日橋川(にっぱしがわ)に架橋されたものです。
もともと、この橋梁は1890(明治23)年に当時の橋梁技術の分野では先進国であったドイツで製作され、1891(明治24)年に「九州鉄道(現在のJR九州)鹿児島本線・船小屋駅〜瀬高駅間」の矢部川(福島県筑後市大字津島〜福岡県山門郡瀬高町大字長田)に架橋されていたものですが、大正時代になって列車重量が増加したためにプレハブ橋梁では耐荷重不足となり、荷重に耐えられる新しい橋梁に架け替えられた際に取り外された橋梁です。
会津地方の電源開発が進む中で、当時、「猪苗代水力電気株式會社」(東京電灯株式會社の前身)の社長であった仙石貢(1857−1931)は、かつて「九州鉄道」の社長であり、この橋梁も九州から福島県の会津に運ばれて転用(1921(大正10)年)されることになりました。猪苗代第四発電所の建設中は資材運搬用の鉄道橋梁として使われていましたが、発電所が完成した後は発電所の保守・点検用の道路橋となり、現在では一般道の橋梁として通常の維持管理(東京電力株式会社猪苗代電力所の水力発電設備修繕費)で使用されながら保存されています。
当時、この型式のプレハブ橋梁はドイツから日本に11橋輸入されましたが、現存する橋梁は、この「切立橋」を含めてわずか2橋となり、歴史的建造物として大変貴重な産業技術遺産です。
製作 ハーコート社(ドイツ)
長さ 49.00m
型式 ボーストリング・トラス橋
特徴 構造部材をピンとボルトで連結し組み立てるプレハブ橋。ドイツのハーコート社が発展途上国や植民地向けの橋梁として製造・輸出していた橋梁。
所有者 東京電力株式会社(猪苗代電力所)











橋梁下部

「東京電力・猪苗代第四発電所」に隣接して架橋されています。
鉄道局技師当時の仙石貢(1857−1931)は、信越本線・碓氷峠のアプト式鉄道建設にもかかわりがあります。
「・・・明治17(1884)年3月から測量技師南清、小川資源によって進められていた横川−軽井沢間の調査により、いくつかの鉄道建設ルートが検討されました。25〜100パーミルにも達する勾配と、ループ線、スイッチ・バック、ケーブル線などが検討されました。また当時ドイツに留学中の鉄道局技師仙石貢と吉川三次郎によるアプト式の紹介などもあり、最終的には建設費用等の理由から、アプト式により66.7パーミルの勾配を乗り切る方式に決定し、明治24(1891)年着工、明治26(1893)年開通しました。・・・」(大木利治「急勾配に挑んだ軌跡〜信越本線碓氷峠アプト式鉄道跡〜」『技術と教育』第215号 技術教育研究会
1990年7月)