どうして高電圧で送電するの
直流発電エジソンと交流発電の送電対決

2004年3月16日


<送電線の損失を少なくするには>
電線にも抵抗はあります。この抵抗のためにせっかく発電した電気が無駄に使われてしまいます。
その電線の損失を減らすために多くの対決と頭脳が結集されているのです。
簡単な解決法は送電線の抵抗を減らすことです。そのためには
@電線を太くすることにより、送電線の抵抗を減らす。
A発電所からの距離を短くすることにより、送電線の抵抗を減らす。
<実現しなっかた。理由>
@電線を太くすると電線の材料費がかさむので設備費がかかりすぎる。自重が重たくなる
A多くの発電所を町の中に作らなくてはならない。これも設備費がかさむ

<解決する理論は電圧を上げろ>

家で1000Wのオーブントースターを
使ってパンを焼くのを例に、
発電所からの送電線の抵抗を2Ωとして、
計算してみると


@トースターに100Vをかけたときの送電線の損失
流れる電流は I=P/V=1000/100=10A
製品のトースターは1000Wになるように
トースター抵抗R=V/I=100/10=10Ω
の発熱線を使用して会社は売り出すものとします。
よって送電線抵抗での電圧はV=I・R=10×2=20V
このときの送電線の損失はP=V・I=20×10=200W
(P=V・I=R・I・I=R・I^2=2×10^2=200W
(P=V・I=V・V/R=(V ^2)/R=(20^2)/2=200W
発電所の発電電圧は100V+20V=120Vです。

Aトースターに200Vをかけたときの送電線の損失
流れる電流は I=P/V=1000/200=5A
製品のトースターは1000Wになるように
トースター抵抗R=V/I=200/5=40Ω
の発熱線を使用して会社は売り出すものとします。
よって送電線抵抗での電圧はV=I・R=5×2=10V
このときの送電線の損失はP=V・I=10×5=50W
(P=V・I=R・I・I=R・I^2=2×5^2=50W
(P=V・I=V・V/R=(V ^2)/R=(10^2)/2=50W
発電所の発電電圧は200V+10V=210Vです。

発電所の電圧を高くした方が送電線の損失は減少します
P=R・I^2の式より電流が低いと損失が少ないといってもよいかも
( P=R・I^2の式には電圧が消えているので送電線部分の電流で
説明が出来るので、説明しやすくスマートである)

<トースター抵抗をどうして計算するのか>
トランスを使用すると2次側をいつも100Vとして固定すると
1次側と2次側の電力は同じなので2次側で消費される
電力だけを考えれば製品の抵抗を計算する必要はないが
上記の図ではトランスを使用していないので
ここでは念のために計算を入れました。


<危険な高電圧とトランスなどの発明>
電圧を上げると雷と同じで放電や接触によって感電の危険性が増します。
電圧を上げると送電線の損失が減ることがわかっているが、家の近くでこのような高電圧で送電すのは危険性のために高電圧にすることができない。
これによりお金のあるエジソンの直流発電が勝利を収めていた。

しかし、1882年にファラデーの電磁誘導現象を基礎に、フランスのゴラール(L.Gaulard)とイギイスのギブズ(J.Gibbs)によって実用的なトランスが発明された。トランスは交流しか変圧できないので交流発電には天からの贈り物なのである。

また、電球だけなら関係ないが、この時期に広まった蒸気機関に変わる直流電動機が中小工場のなかで欠かすことの出来ないものになっていた。この問題も交流発電を支持したテスラにより2相発電機と2相電動機が発明されたことや三相交流技術の確立などの多くの理論や発明が直流発電から交流発電に変わる力となった。

これにより、現在は遠く離れたダムなどからの発電所から、鉄塔で220万ボルトで送電して、町や家の近くで6万ボルトや200ボルトなどに変圧して送電による損失を少なくして、電気を伝えることができるのです。

送電にも多くの人の理論や発明・お金へのエゴや倒産などの歴史が隠されているものなのかもしれません。

(参考文献:「新版 電気の技術史」山崎俊雄・木元忠昭 共著 オーム社)


<昔の私の疑問から>
電気を高電圧で送る理由は電力はP=V・Iなので式をV=I・Rで展開すると
P=R・I・I=R・I^2だから電流を少なくした方が損失が少なくなると説明していた
しかし私はどうしてもこの説明が納得いかなかったのです。

それはP=V・IをI=V/Rで展開すると
P=V・V/R=(V^2)/Rとなり電圧を高めると損失が大きくなる
よって高電圧で送電すると損失は高くなるとなり、
何だかP=R・I^2の公式で説明していることが
だまされているような気持ちだったからです。

高電圧にするとどうして送電線抵抗部の電圧が減るのかを説明せずに
P=R・I^2の公式が一人歩きをしているような気がします。
(電圧を消すことによって電流だけが関係しているように綺麗に式を見せている)

発電所が高電圧で送電すると送電線への電流が減少して、
それにより送電線の抵抗値は一定のため
送電線抵抗部の電圧も減少するので
電力の式P=V・IをIやVで展開しても
送電線部の抵抗による損失
は R・I^2=(V ^2)/R で同じになります。
(ここでのVは送電線部分の電圧であり、発電所の電圧ではない。)

上記の話で納得できたのでページにまとめてみました。


投稿者:愛知県刈谷工業高校 児島高徳
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