ツタンカーメン王陵のエンドウ豆を育てて栽培植物の
ルーツと食料生産の技術史に思いをめぐらそう
 〜数千年以上の歴史を持つ古い野菜「エンドウ」〜

1999/08更新


    
 エンドウ
 マメ科 学名:Pisum sativum L. 和名:エンドウ
     漢名:豌豆  英名:pea , garden pea , green pea 

 数千年以上の歴史を持つ古い野菜である「エンドウ」は、日本では昭和50年代に野菜の仲間入りをしました。「エンドウ」は野生種が発見されていません。そのため原産地も中央アジアから中東地域らしいと言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。日本への渡来時期も明確ではなく、10世紀の書物に「ノラマメ」の記述があり、これをエンドウとすると、かなり古くから栽培され食用となっていたことになります。明治以降にヨーロッパから導入されたものがもとになり、莢用、青実用、種穀用に品種が分化し栽培されるようになったとされています。

 紀元前1358年〜1349年にエジプトを統治したツタンカーメン王の墓は、1923年イギリスの考古学者カーナ・B・カーター氏によって発掘されました。その際に発掘された副葬品の中からエンドウ豆が発見されました。紀元前にエジプト人が食用にしていたと思われるこのエンドウ豆を持ち帰り栽培したところ成功し、その一部がアメリカで栽培されました。昭和31年に水戸の大町武雄氏がアメリカに桜、銀杏など日本独特の種を送ったお礼として、V・イレーヌ・フランソワース夫人からツタンカーメン王陵から発掘されたエンドウ豆に由来する種が送られました。この種が日立市、千葉市、水戸市などの小学校等で栽培されました。このエンドウ豆はそうして収穫された種に由来しています。

 ツタンカーメン王陵のエンドウ豆(数千年以上の歴史を持つ古い野菜「エンドウ」!)を育てて栽培植物のルーツと食料生産の技術史に思いをめぐらしてみるのも楽しいと思います。


栽培方法

 10月下旬から11月上旬に種を播きます(春に播くことも可能)。種に水を十分吸収させてから播けば、栽培は意外と簡単です。十分日光にあてて徒長になってしまわないようにします。直接霜に当たらないようにして、窒素分がやや少ない緩効性化成肥料を月1回与えます。2m以上に茎が伸びることもあるため、支柱を立てる必要があります。このエンドウ豆は花やサヤが紫色になります。白色になったら雑種と交雑してしまっていることになるので処分します。付近で在来種のエンドウ豆が栽培されていない方がベストです。

 種の無料配布は、収穫後に技術教育メーリングリストでアナウンスします。栽培して無料配布してくださる方にお分けしたいと思います。

参考文献

 大久保増太郎「日本の野菜〜産地から食卓へ」(中公新書1257)
             中央公論社 1995.8. pp.27-30


群馬県碓氷郡松井田町立西中学校  大木 利治

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