お勧めエンジン模型あれこれ

1999/08更新


原動機の模型

 原動機の学習で、外燃機関としての蒸気機関や蒸気タービン、あるいは内燃機関としてのガソリンエンジンなどは、自作やキット(本田技研のエンジンキットG−100や大宮精工製のスチームエンジンなど)がありますが、内燃機関の実物はなかなか入手しにくいのが実状です。オートバイのエンジンでしたら運搬もできますが、自動車のエンジンは分解せずに運搬することは事実上不可能です。ましてカットモデルづくりは工具や工作機械などが必要で、なかなか手が出せないのではないでしょうか。教具として販売されているカットモデルは非常に高価で(実際のカットモデルは市販のものよりひじょうに高額ですし、一般には市販していません)学校の予算では購入できないと思います。図や写真、ビデオで我慢するしかないケースがほとんどだと思います。しかし、ホビー用として販売されているエンジン模型のキットを教具として使うという方法もあります。これでしたら、学習に必要なカム機構やピストン、クランクシャフトなど着色してスケルトンモデルやカットモデルにすることも簡単です。また図や写真、ビデオ映像ではわかりにくい部分も生徒たちにわかりやすく示すことができます。模型を作りながら、エンジンのメカニズムについて教材研究することにもつながるでしょう。こうしたエンジン模型のキットについては、「技術のおもしろ教材集」で「実物・模型」の中にある「本物で技術を語ろう(機械)」でいくつか紹介しましたが、その後さらに調査し、入手できたものもありますので、紹介します。その気になって捜すと、案外見つかるものです。また、捜すことに協力していただいた友人(東京の小林豊君をはじめとした、かつての生徒たち)にも感謝します。
 ところで、こうしたモノに対する文化の違いなのでしょうか?エンジン単体の模型キットは圧倒的に外国製が多くなっています。それも日本製のエンジンというのもおもしろいことです。意外なところからモノに対するものの考え方の違いを考えさせられました。
 また、キットでなく完成品ですが作動原理がわかりやすい「スターリングエンジン」についても紹介したいと思います。

ガソリンエンジン


SOHC 直列4気筒 HONDA 500cc

 本田技研のモーターサイクル用500ccエンジンです。バルブ機構はSOHCで直列4気筒です。スケールは1/3で、1997年から販売されています。販売元は米国・イギリスですが製造は中国です。MINICRAFT MODELS,INC キットナンバーは MINICRAFT MODEL KITS「11202」となっています。
 日本では輸入販売元が「ツクダホビー」となっていますので、そちらに問い合わせれば在庫状況や販売店がわかると思います。
 ツクダホビー  〒111 東京都台東区橋場1−36−10 電話 03−3871−3210


ロータリーエンジン(ヴァンケル・ロータリーエンジン) MAZDA 12A−REW

 マツダ(このエンジンは東洋工業であった当時のものです)のロータリーエンジンです。スケールは1/5で、製造元や日本での輸入販売先は前述の「HONDA 500cc」エンジンと同じです。キットナンバーは「11201」です。


OHV V型8気筒 Corvette 283 ”Small Block”(1957)

 米国の「The ERTL COMPANY,Inc.,」で1998年から販売されているものです。スケールは1/6です。下のURLで紹介されています。http://www.ertltoys.com この製品も前述の「ツクダホビー」が国内での輸入販売元です。


OHV V型2気筒 Harley−Davidson Panhead1200(1948年)

 この製品はプラスチック製ではなく、全金属製で精密鋳造技術を生かした超精密模型(スケールは1/6)です。鋳物の街、埼玉県川口市の「(株)マルシン工業」で製造・販売しています。ピストンリングやチェーンなど1つ1つしっかり作られており驚くばかりです。含油軸受などを使用しているため注油の必要がありません(組立には専用の油を使います)。エンジンのメカニズムだけでなく、精密鋳造技術などの学習に参考となります。「マルシン工業」はその精密鋳造技術を生かして、かつてポルシェの水平対向エンジンを忠実に模型にして圧縮空気で作動させる製品を作っています。日本工業大学工業技術博物館の特別展でも展示されていました。この水平対向エンジンは高額で、教具として購入するには躊躇してしまいましたが、このOHV V型2気筒エンジンは19800円(販売店経由ですと割引されると思います)です。完成品は39800円ですがキットのほうがメカニズムの勉強になると思います。こちらは空気圧でなく専用のモーターで作動します。また、エンジンの回転数に合わせて音を発生するサウンドエフェクターがオプションで出ています。このエンジンを搭載していたハーレーダビットソン・パンヘッド1200(1948年)は、航空機技術を応用した「油圧タペット」を採用するなどした画期的なエンジンであるということです。
 (株)マルシン工業 埼玉県川口市飯塚3−9−35 電話048−253−1511


OHV V型2気筒  moto GUZZI V−850 California

 イタリアの「PROTAR」社から販売されていたエンジンだけでなくオートバイの車体すべて含めて内部まで忠実に再現した超精密模型(スケール1/6、プラスチック製、34000円前後・・・・ちょっと高価ですね。このタイプの模型は世界に唯一無二だそうです)です。現在は店頭在庫のみとなってしまいましたが、日本での輸入販売元である「プロター・ジャパン」で販売店一覧表を取り寄せ問い合わせれば見つかることがあります。(せっかくなので教具に使おうと仙台と名古屋の小売店から2セット入手できました。)ここまでくると、教室などに展示して生徒の学習への動機づけに使っていこうと思っています。(これが意外と効果あります。)
 プロター・ジャパン 〒178 東京都練馬区大泉町3−34−6 電話03−3867−5755


スターリング・エンジン HOG−Mikrostirling

 スターリングエンジンは、スコットランドのロバート・スターリングが1816年に考案した外燃機関です。同じ外燃機関である蒸気機関の高圧ボイラーが爆発事故を多発させ、その心配のいらないスターリングエンジンが脚光を浴びました。しかし、まもなく登場した内燃機関であるガソリンエンジンやディーゼルエンジンに押され、次第に姿を消していきました。しかし、近年ふたたび環境問題が深刻化するなかで注目され、さまざまなメーカーによって実用化への研究と開発が行われています。技術教育の分野でも「スターリング・テクノ・ラリー」などが開催され、原動機としての可能性や設計でのアイディアを学ぶものとして注目されています。
 ここで紹介するスターリングエンジンは、ドイツ製のスターリング・エンジン模型です。教具として一般に販売されているものはシリンダーやディスプレーサー部分が見えませんが、この製品は内部が見えて作動の様子がわかります。価格も34000円前後で一般的な教材用スターリングエンジンの半分です。この模型によって、スターリングエンジンの作動原理を調べたり、ホイール回転数の変化を測定するなどの実験も可能です。
 国内では、「(株)京商」が販売しており、入手は簡単にできます。
 (株)京商    〒243 神奈川県厚木市船子153
    ユーザ相談室 電話 0462−29−4115
    商品名:スターリングモーター 品番:60991


投稿者:群馬県碓氷郡松井田町立西中学校 大木 利治

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