8時間でできる!「2×4材を使ったベンチ製作」

更新日:2002年11月2日


 中学校の技術科というと木材加工というと、本棚をつくるものだと思っていませんか。昔私自身が技術の授業を受けた頃には「木材加工2」という領域がありました。その中でイスの製作に取り組んだ経験があります。本棚と違って、イスは人の体重を支える構造物です。強度を考えて製作しなければなりません。私にとっては、中学時代のイスの製作は木造建築に通じる貴重な原体験です。
 しかし残念なことに、87.5時間しかなくなってしまった今の技術科にはそのゆとりがありません。数年前にギジュツ・ドット・コムのメンバーのみなさんが、2×4材を使ったベンチなどを紹介されているのを見たとき、これだ!と直感しました。2×4材はまさしく木造建築のための建材です。しかも様々な機械を駆使することで極めて短時間に丈夫な製品を製作できます。しかもリーズナブル!
 テストケースとして今回選択技術の時間に8時間で製作に取り組ませてみましたので、報告します。

生徒作品紹介

ギジュツ・ドット・コムに紹介されていたベンチを参考に4人がけベンチです。材料費1050円 4人がけベンチをちょっと短くして2人用のラブラブベンチになっています。材料費750円 ちょっとお尻の大きな人のためにサイズが大き目に変更されています。材料費900円 こちらは、かなり小さめにした作品です。丁寧にニスが塗られていました。材料費450円
こちらは松下のページを参考につくったくつろげるイスです。これでも材料費1650円です。 こちらも松下のページを参考につくったプランターおきです。材料費1050円 ベンチを一人用に短くしたらイスになりました。ちょっと大きめです。材料費750円 ボルトを4本使ったオリジナル設計の踏み台です。かなり丈夫です。材料費1500円程度


製作に必要な工具&工作機械

  

 2×4材はのこぎりでも十分に切断可能です。ただし、なれていない生徒が切断すると直角に切断できることはまずありません。そこで、のこぎりの扱いについては木製サイコロ作りなどで扱うことにして、ここでは写真の卓上スライド式丸ノコで切断しました。9万円ほどで備品で購入しました。カバーもついていて比較的安全であるだけでなく、切断面が確実に直角にできるので、加工精度が飛躍的に向上します。生徒にその違いを実感させるのもいいかもしれませんね。
 またこの卓上スライド式丸ノコは中央の写真のように動かすと一定の角度で切断することもできます。問題は丸ノコには違いないので、教師が全て操作しなくてはいけないことぐらいでしょうか。生徒は使用禁止です。

  

 そして、この電動インパクトドライバが必需品です。単にコースレット(大きな木ねじ)をねじ込むドライバーとしてだけでなく、先端にキリをつければ下穴をあけることができますし、木工用のドリルに変えれば大きな穴も空けられます。作業台ごとに1台(合計8台)のインパクトドライバーを用意して使わせています。先端に取り付ける様々なバイトはこうして透明な引き出しに整理していつでも使えるようにしておきます。生徒達も最初は恐がりながらも、最後の頃にはバシバシ使っていました。そんなに力のない女の子でも十分に操作できていました。

   

 インパクトドライバを使って2×4材に直径11mmかつ深さ20mm程度の穴をあけ、そこにコースレットをねじ込めみます。上から直径12mmのラミン棒を木づちで打ち込んで、のこぎりでぴったりに切り落とし、ヤスリで仕上げれば、コースレット版かくし釘の完成です。釘と違ってサイズも大きいのでけっこう簡単に加工できます。イスの座面などは全てこのやり方でやるようにしました。

   

 組み立てが完了したら、隅々までよくヤスリがけします。2×4材は4面加工されているとはいえ仕上げは必要です。 最後に透明水性ニスで仕上げます。一度塗りしてから乾かして、再度ヤスリがけして2度塗り、3度塗りと繰り返すと、きれいな光沢が出てきて、2×4材の質感が一段と高まります。

2×4材について 

 今回使った2×4材は、1本(2m44cm)310円でホームセンターで市販されていたものです。これを大量に買い付けて輸送代をかけてトラックで運んでもらい、消費税と輸送費を含めて、1mあたり150円で生徒に使わせました。建材なので、木工の授業でよく使われている他の材料と比べるととても安価です。最初はいろいろと面倒なことはありますが、初期投資さえできれば、実践はそれほど難しくありません。

文化祭で展示会を実施 

   

 「すわってみてください!」黒板にそう書いておくと、これつくったの?!おれ来年選択技術とる!という生徒達。なかなかインパクトがあります。一つ一つの作品には材料費と製作した生徒の写真と感想などをそえておきました。教卓の上は2×4材とデジカメでとった写真の展示です。

 実際に全学年の生徒に製作させるとなると、加工の途中の材料を置くスペースが大量に必要になります。しかし、それも2×4材を使って棚をつくっていけば解決できるだろうと考えています。今年の後期の選択技術の生徒達と棚作りに取り組んで、来年度はぜひ1年生でこの2×4材を使ったベンチ作りをしてみたいですね。
 ただ一点問題点があるとすれば、あまりにも大きすぎて自転車や徒歩で持ち帰れないということでしょうか。これまでの棚は自転車にくくりつけさせましたが、そうもいきません。今回の選択技術では、保護者に車で持ち帰ってもらうことになっています。なにかよいアイデアがあったらぜひ教えてください。

2×4材なら学校備品を生徒がつくれる 

  

 今回のベンチづくりは8時間で取り組ませましたが、実はその前に、左の写真のような技術室のイスを1人1脚づつ作ってもらいました。そこで学校の予算を使って取り組ませることで、道具や工作機械の扱いに慣れさせることもできます。多少手直しが必要なものも出てきますがこの手はけっこう使えそうです。
 イスばかりでなく、学校で必要な様々な備品が2×4材でつくれます。右の写真は消化器が転倒して噴出してしまうという事件の後に試作した消化器プロテクターです。これから作ってもらうつもりです。給食の配膳台なんかもつくれるんじゃないかと今、思案中です。

 みなさんもぜひどうですか・・・2×4材を使った木材加工! とっても安く、こんなに大きなものが、すごく短期間で製作できます。これからはぜひ、2×4材をつかった木造住宅の情報も集めておきたいですね。


茨城県北相馬郡藤代町立藤代中学校  川 俣  純

戻る