オートマ君から働く人を考える

炊飯プログラムの開発に携わる人々


 オートマ君の授業もひと段落した1995年11月のある日、NHKでまさにオートマ君の授業にぴったりの番組が放映されました。「新電子立国 マイコンマシン」(NHKからVTRを購入可能です。)というタイトルのその番組は、コンピュータで制御された炊飯器などの開発に携わっている人達のお話です。

 オートマ君の授業の最終日に、録画しておいたこの番組を見せることにしました。画面には、炊飯器の開発の様子が映し出されます。プログラムをつくってはご飯を炊き、炊け具合を調べて、またプログラムを修正してはご飯を炊いて、プログラムを作成している様子は、オートマ君でプログラムを試行錯誤しながら作り上げた経験を思い起こさせます。

 そして、女性研究員が「みんなお母さんが炊いていると思っているんですけど、実は私が火かげんしたんです。」というと、子ども達がざわめきました。以下はその時の子ども達の感想の抜粋です。

 私がハッとさせられたのは、子ども達の反応でした。半分以上の子ども達が、技術がすごいというのではなく、働いている人がすごいと感想に書いていたのです。オートマ君の授業が子ども達に与えた影響は、このうちのどれほどなのかは判りませんが、製品開発に関わる人達のひたむきな情熱に、半数以上の子ども達が心打たれるものがあったのは確かでした。

 オートマ君の授業は、これまで現代のオートメーションが楽しくわかる授業をめざしてきました。しかし、このビデオを子ども達に見せてからの私は、本当にめざさなければならないものは、こうして仕事に努力をおしまず自信と誇りをもって生きている人達がいることを、子ども達に伝えることなのではないかと考えるようになりました。そして、その仕事のすごさを伝えることが、技術教育なのではないかと思うのです。

 今、コンピュータに関わって働く人達は増え続けています。しかし、彼らがどんな仕事をしていて、その仕事が社会のどんなことに役だっているのか、どれほど重要で責任のある仕事なのか、私達は意外とわからないままに過ごしているのではないでしょうか。


投稿者:茨城県筑波郡谷和原村立小絹中学校 川俣 純

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