1998/08/03
立体グリグリができるまで
超簡易3Dエディタ「立体グリグリfor Windows(以下「立体グリグリ」と略す)」Version3.1がWindows版として正式にリリースされるまでの経緯、将来の展望を述べる。
(1)「立体グリグリ」とは
「立体グリグリ」は空間思考力を育むためのソフトウエアである。空間思考力を育むには、実物を手に持って立体を理解させることがもっとも効果的な指導方法である。しかしながら、立体を紙の上に表現する、つまり図面を描く場合に、3次元空間から2次元空間への思考のジャンプが必要である。ここで多くの児童生徒が困難を感じている。この困難を少しでも和らげるためにと、川俣氏によって開発されたのがこのソフトウエアの始まりである。

図 1 「立体グリグリ」実行画面
わたしがこのソフトウエアに出会うきっかけは、全国工業高等学校校長協会主催の機会製図検定の指導に携わったことである。工業高校機械科に所属する生徒に等角図、投影図を指導するとき、自分の指導力の無さから半数近くの生徒に検定に必要な能力を養成することができない悩みをいだいた。何かしら指導の補助となる教材はないものかと探していたところ、川俣氏の「立体グリグリ」に出会ったのである。時を移さず、2、3の拡張機能の依頼を川俣氏にしたところ、快くソースを公開してくださり、共同開発の運びとなった。
(2)Windows版開発のきっかけ
1996年の年末のこと、巷はWindows95が巻き起こしたパソコンバブルの頂点であった。異常とも思えるほどのハード、ソフトの新製品ラッシュに、教育現場も巻き込まれた。我々 g-soft(技術教育ソフト開発プロジェクト:発起人は川俣氏)のメンバーは、それぞれの場で主に旧来のNECのPC98シリーズ上で動作する教育用フリーソフトの開発に取り組み、公開してきた。しかし、現場の機器がめざましいスピードで更新され、従来の機器が老朽化し、公開したソフトウエアが利用されにくい状況が生じてきた。もちろん、古い機器が現役で活躍している学校も少なくなく、ソフトウエアの利用価値がゼロになったわけではないが、来るべき将来に備えて、新しいOSで動くように移植しておくことは必要なことである。以上のような理由から、積極的にソフトウエアをWindows上に移植する取り組みをスタートした。設計とパッケージングを川俣氏、コーディングを平田、デバッギングをg-softのメンバーで分担している。
(3)開発と開発環境の変遷
1997年の開発開始当初は、Windows3.1の存在が無視できず、Windows95上でVB2を使用して開発していた。ここで現在の立体グリグリで使用しているアルゴリズムがほぼ出そろった。このままVB2で開発しつづけることも可能であったが、VB2の動作の遅さ、付属するコントロール(部品)の少なさから、将来の発展性を考慮して、VB4へ移行した。VB4にはツールバーなど、Windows95上で通常使用される最低限の部品が用意されており、ユーザインターフェイスが大きく改善された。

図 2 VB5の開発環境
この当時、すでにVB5が発売されていほぼ1年が経過しており、安定して動作しているという報告が多くされており、VB5への移行を検討した。移行の一番の決定動機となったのは、VB5に搭載されたネイティブコンパイラ機能である。VBの一番の問題とされていた動作速度を改善する画期的な機能である。Cに比較すると、速度にやや遜色があることは否めないが、開発に要する時間、労力と、結果をはかりにかけ、1997年の年末、VB5に移行し、現在に至る。1998年6月現在、VB6(英語版)のリリースが7月であることが明らかになっている。しかしながら、1998年1月末に結成したg-softの運営方針としてVB5Proを共通の開発言語としようということがあり、当面VB5を使用する予定である。Javaという優れた開発環境の選択肢もあるが、当面は考慮していない。
(4)「立体グリグリ」の将来
現在「立体グリグリ」はワイヤーフレームの立体を表示・編集することができる。この「ワイヤーフレームである」というコンセプトは隠れ線の指導や線を引く感覚の養成に有益であるため、将来も残していくことになろう。しかし、現実味のある立体を考える上では、面がきちんと表示されることが望ましい。将来の「立体グリグリ」の姿としては、ポリゴン表示とワイヤーフレーム表示を選択できるようにしたい。また、現在使用いただいているユーザ各位からの要望を極力実現したものとしたい。今後とも、暖かいご支援をお願いする次第である。
山口県立下関工業高校 平田 敦